鼠径部(足の付け根)にしこりの様な膨らみがあることに気づいたものの、痛みがないため医療機関を受診せずに過ごしている――仕事で忙しい現役世代の方では、こうしたケースが少なくありません。「忙しい」「日常生活に支障がない」「手術と言われたら不安」という気持ちから、受診を後回しにしてしまうのは自然なことです。
しかし、ヘルニアは自然に治ることはなく、時間とともに少しずつ膨らみが大きくなる病気です。初期の段階では、立ったときや咳をしたときに足の付け根やお腹が膨らみ、横になると戻るため、深刻に感じにくいのが特徴です。そのため「まだ大丈夫」と判断してしまいがちですが、膨らんだり凹んだりを繰り返すうちに出口(ヘルニア門)が徐々に広がっていきます。
問題となるのが、腸が飛び出したまま戻らなくなる「嵌頓(かんとん)」という状態です。嵌頓が起こると、強い痛みや吐き気、腹部の張りを伴い、緊急手術が必要になることもあります。昨日まで痛みがなかったのに、急に救急外来を受診するという経過は、決して珍しいものではありません。
加齢による筋力低下に加え、咳や便秘、重い物を持つ動作など、繰り返し腹圧がかかることでヘルニアが進行する傾向があります。一方で、症状が軽いうちに状態を確認できれば、身体の状態や生活背景を踏まえた計画的な治療方針を立てることが可能です。すべての鼠径ヘルニアがすぐに手術になるわけではなく、「今は経過観察で大丈夫」「このタイミングで手術を考える」といった選択肢があります。
「痛くない」という理由だけで判断せず、本当に鼠径ヘルニアなのか、治療が必要なのか経過観察で大丈夫なのかを知ることが大切です。早めに専門医に相談しておくことで、将来の急なトラブルを避け、安心して日常生活を送ることが出来ます。
当院では平日仕事で忙しい方でも受診・治療を行いやすいよう、土曜日の外来および手術にも対応しています。お気軽に相談ください。
