治験管理室 三友 悟 インタビュー

患者さんのために行うのが「治験」です

治験管理室
Clinical Trial
心臓内科医長 兼
治験管理室室長
三友 悟
Mitomo Satoru

治験はステップごとに厳しく慎重に行われます

薬や治療法は患者さんの手元に届くまで、いくつもの過程で安全性や有効性が検証されなければいけません。薬の開発を手掛ける製薬会社が最初に動物実験をして安全性を調べ、その後に臨床試験といって人を対象に安全性や有効性を調べます。薬の場合、第Ⅰ相試験(健康な人を対象に主に安全性を確認し、薬の吸収や代謝、排泄などに関する情報を収集)、第Ⅱ相試験(少数の患者さんを対象に有効性や安全性、用量・用法などを調べる)、第Ⅲ相試験(多数の患者さんを対象にこれまでの試験結果の有効性や安全性、使い方を最終的に確認する)というステップで試験が行われます。

これらのステップを経て、患者さんに安全で有効であることが実証され、製薬会社は厚生労働省に承認申請をします。厚生労働省は提出されたデータを審査し、それが承認されて初めて医薬品として認められます。こうして我々や患者さんの手元に薬が届けられるのです。最終的には第Ⅳ相試験(市販後に第Ⅲ相試験までには確認されなかった副作用などを調べる)を行いますが、生命や健康に関わる重要なことなので、安全性と有効性を厳しく、かつ慎重に行っています。当院がお手伝いしている治験は、第Ⅲ相試験が多くなっています。

このように患者さんのご理解をいただいた上で、将来的に病気を治療する薬や治療方法の開発に協力し、患者さんの診療に少しでも役立つお手伝いをするのが、新東京病院治験管理室の仕事です。

内容を十分ご理解いただいた上でご協力をお願いしています

治験は内容をご説明して、十分にご理解いただいた患者さんにお願いしています。治験によって多少差異はありますが、最初にスタッフが事前に外来のカルテから対象となるような患者さんをリストアップします。治験の担当者が患者さんと関わる医療チームに話をして、患者さんに打診をしてもらいます。その後、患者さんが外来で来られた際に、主治医から正式にご提案するという流れです。ただし、時間は限られていますので主治医からは簡単にお話をして、その後に詳細をチームの担当者から話すのが一般的です。

患者さんには一定の期間、外来に頻繁に来ていただいて必要な検査も受けていただくことになりますので、負担に感じるかもしれません。治験によって方法や期間は千差万別なのでその都度、患者さんはもちろんご家族にご理解いただいた上でご協力をお願いします。医療ドラマやマスコミの影響なのか、中には治験と聞いてネガティブに受け止める方もいらっしゃいます。ですから誤解がないように、我々が知っていることや提供できる情報は包み隠さずお話をして、きちんとご理解をいただくまで時間をかけます。

当院の場合、治験をお願いする患者さんは60歳以上の比較的高齢の方が多いです。頻繁に病院に来ていただかなければならないことを考えると、現役を退いた方でご自身の健康にも目を向けていらっしゃる患者さんといったように、対象も絞られてきます。現役世代の方はお仕事も忙しいので、なかなか通院する時間をつくるのが難しくなってしまいますので、どうしてもお願いするのは高齢者の方が多くなってしまいます。

協力して良かったと思われる治験を目指します

患者さんに不利益がないことが大前提ですし、治験に協力するかどうかは、最終的には患者さんとご家族の判断です。しかし、ある部分では患者さんのボランティア精神に頼らなければならないところもあります。同じような病気や症状で苦しんでいる人のために協力しようという患者さんの尊い気持ちを大切にしたいですし、決して治験は病院のためではなく、あくまでも患者さんのためであることをご理解していただくのが我々の仕事です。患者さんに参加して良かったと思っていただけるような治験になったらいいと思っています。

治験を通してより良い薬と治療を還元したい

このように治験は薬が世に出るまでの大事なステップでもあり、どうしても通らないといけません。新東京病院としても薬の開発にご協力できるところはしたいと思います。大きな話をすれば、それが日本の医療の発展のためになるかもしれませんし、グローバルな治験のお話も来ているので、もしかしたら世界の医療の発展につながるのかもしれません。しかし、そうは言っても病気で苦しむ患者さんにとっては、そんなことよりも私の病気を治してほしいと思うのが当然です。

我々もそのような患者さんの気持ちを考えて判断しています。治験に携わる医師としても日々、研鑽を積まなければなりません。それは技術もそうですし、学術もそうです。やはり自分たちが大事にしている患者さんに良い治療を還元するためには、常に新しいものに触れていることが欠かせません。これからも治験を通して、新しい薬や治療の情報を分かりやすく患者さんに還元していけたらいいと思っています。