糖尿病内科 周 聖浦 インタビュー

糖尿病の治療を長期的にサポートします

糖尿病内科
Diabetes
医長
周 聖浦
Shu Seiho

治療の鍵を握る3要素の基本は「教育」から

糖尿病の治療には主に3つの要素があります。1つ目は良好な血糖管理、2つ目は糖尿病からくる全身の合併症の予防とそれについて知ることです。糖尿病は自覚症状がないために患者さんは自分が大丈夫だと思い込んでしまうので、病気に関する知識をしっかりお伝えする教育が必要となります。3つ目は糖尿病ががんになるリスクを高めるので、血糖値が高い患者さんにはがんの検査を受けるように説明することです。これらが治療においてとても重要になります。このように治療には患者さんに対する教育が必要になるので、食生活、ご家族、経済的な事情などをお聞きし、本人が納得できる治療を決めてそれを長期的にサポートするのが糖尿病内科の仕事です。

祖父の死が医師を志すきっかけに

私は生まれも育ちも台湾です。私が中学校1年生の時、祖父が70歳を前に結核で亡くなりました。当時の台湾の医療はそれほど進んでいなくて、結核も含め感染症で命を落とす人がたくさんいました。祖父の死に大きなショックを受け、医者を志して医学部に進学しました。祖父が亡くなって25年になりますが、今では結核も治るようになり、医学の進歩を実感しています。医学部に入り、高齢化社会の中で糖尿病や高血圧、高脂血症といった慢性疾患の治療がいかに大切かを感じました。台湾でも糖尿病患者はとても多いのですが、治療はそれほど重視されていなかったこともあり、糖尿病を専門に選ぼうと思いました。

糖尿病の研究や治療方法を海外で学んでみたいと思い、かなり進んでいた日本で勉強することを決意しました。大学を卒業してから兵役を経て、26歳で日本にきました。東大病院で基礎研究をした後、実際に臨床の経験、特に重症の患者さんへの治療をしっかりしたいと思い、当院に来ました。

無理のない生活習慣の改善をサポートします

糖尿病の治療と聞くと辛い食事制限や運動をしなければならないと思う方も多いと思いますが、食生活の改善で我々がこうしましょうと言ったところで、人はそんなに簡単に変えることはできません。私も若い頃、過食傾向があって医学の勉強しながら、試験の前に食べ過ぎてしまう傾向があったのでよく分かります。昔は糖尿病だと甘い物を控えるように強く言われ、砂糖や甘い物を減らすような指導が行われていました。でも最近は考えが変わってきて、脂肪や糖質の制限よりも過食に注意し、加工食品をなるべく取らないことがトレンドになっています。余程のことでない限り、これを食べてはいけないという指導はしません。

薬もかなり進歩していて、患者さんが低血糖を起こさないための良好な血糖管理ができるようになっています。入院と外来で行う綿密な指導と、医師を含めた周りのスタッフの協力を得ながら、徐々に行動を変えることはできるのです。褒められることを嫌がる人はいません。ですからどんな結果が出てもどこかに必ずいいところがあるので、患者さんにはそこから話をするようにしています。「今回の結果をどんな風に考えていますか?今後はどのように考えますか?」というように患者さんの主体性を引き出したいと思っています。目標も患者さんに提案してもらうと、自分でやらなければならないという動機付けになりますし、それでいい結果につながれば周りから褒められます。評価されるのは人間の成長の原動力だと思います。

病院に来ていただくのは1~2カ月に1度というペースになるので、患者さんの従来の生活やご家族、働いている方なら職場など、周りの環境も大きく影響します。でも地道に患者さんへの教育を続けていくと、なかなか生活習慣を変えることができなかった方が変わり、大過なく過ごされているケースもたくさんあります。そのような患者さんを見ると本当に良かったと思いますし、慢性疾患の治療における教育の重要性を痛感しています。糖尿病の教育入院は2週間が基本となります。入院中には食事の内容、運動療法の習慣付けをします。

患者さんが元々食べていた食事内容と入院中の食事を比べてその違いを理解していただいたり、本来必要である野菜の量とかを知っていただいたりするのは、とても重要なことです。その間に時間をかけて血糖を徐々に安定させることも行っています。

健康寿命を伸ばすことも当科の使命です

糖尿病の患者さんへの教育を充実させることによって、糖尿病治療に使われる医療資源が明らかに減ることが知られています。高くていい薬を漫然に処方するのではなく、患者さんの健康に対する意識を高め、生活を改める方向へ医師が引っ張っていくことが、増え続ける医療費に歯止めをかけることにつながります。当科は健康寿命をどれだけ伸ばせるかを考えた治療を行っていくことも大きな使命だと考えています。命はあくまでも患者さんのものなので、無理やり押し付けるようなことはしません。我々は患者さんにとって常にベストであることを考えますが、どんな人生を送りたいのか、患者さんの自由を尊重しています。その上でご本人が納得できる治療を選んでいきたいと思います。

糖尿病に関する不安があれば、ぜひご相談ください

もし糖尿病になってしまっても、血糖の管理や合併症の定期的なスクリーニングがきちんとできれば、それほど恐れることはありません。その点で当院はしっかり治療を行っている自信や自負はあります。ですから糖尿病に関して不安があってしっかり勉強したいとか、合併症の検査と治療をしたいのであれば、ぜひいらしてください。