脊髄刺激療法

Spinal Cord Stimulation(SCS)
耐えられない痛みをコントロールして生活の質(QOL)向上を目指します
世界で35万人以上、日本では6,000人以上がSCSによる治療を受けています
脊髄刺激療法(SCS)とは?

脊髄刺激療法(SCS)とは?

脊髄刺激療法(Spinal Cord Stimulation: SCS)とは、刺激鎮痛法(stimulation produced analgesia : SPA)※1の代表的方法で、脊髄に微弱な電気を流すことで難治性の痛みを緩和する外科的な治療のひとつです。
神経障害痛、虚血痛に有効となっており、がんに関達する様々な神経障害痛に対しても有効例が報告されています。
SCSはあくまでも痛みを和らげるためのものであり、痛みの原因を取り除く根治療法ではありません。

  • 薬では十分な効果が得られず、日常生活にも支障をきたす慢性的な痛みに対する治療法のひとつです
  • 海外では40年前から実施されている療法です
  • 世界で35万人以上、日本では6,000人以上がSCSによる治療を受けています
  • 国内では健康保険の適用が認められています
  • 硬膜外ブロックと同等のリスクがあります
慢性的な痛み

※1 刺激鎮痛法(stimulation produced analgesia : SPA)は,神経刺激により鎖痛を図る方法で,鍼治療,経皮的電気刺激法,脊髄刺激療法,大脳皮質運動野刺激療法などがあります。SPA最大の利点は機能障害をきたさない事にあります。
※ SCSは,予後予測を考慮し,適応を決定する必要があります。

脊髄刺激療法(SCS)による痛みの和らげ方

痛みの伝わり方

痛みは電気的な痛みのシグナル(シナプス)が脊髄を通って脳に伝わって初めて「痛い」と認識されます。

脊髄刺激療法による痛みの和らげ方

脊髄に電気刺激を与えると、痛みのシナプスが伝わりにくくなるため、痛みが和らぎます。

1.鎮痛のメカニズム
鎮痛のメカニズム 痛みの刺激はまず脳に伝達されるまでの間に脊髄の後索を通過しますが、脊髄の後部に電気刺激を与えると、痛みの伝達を抑制するGABA・アセチルコリンが増加し、神経の興奮を抑制することで痛みをやわらげます。
また、痛みを抑制する物質(セルトニン系やノルアドレナリン系)の作用が活発化させます。
2.血管拡張による鎮痛効果
血管拡張による鎮痛効果 電気刺激を与えると、神経の末端で血管拡張物質(カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)、一酸化窒素(nitric oxide : NO))が増加します。
血管が拡張すると交感神経が抑制されることで痛みをやわらげていきます。

脊髄刺激療法に有効な痛み(対象疾患)

神経障害痛、虚血痛には有効ですが、侵害受容痛(生理的な痛みや炎症による痛み)には効果がありません

脊椎・脊髄疾患による腰下肢痛
  • 腰部脊柱管狭窄症
  • 脊椎手術後に再燃・悪化した痛み
  • 腰椎多数回手術(MOB)
  • 癒着性くも膜炎
脊椎・脊髄疾患による頸部、肩、上肢の痛み
  • 頚部脊柱管狭窄症
  • 頚部手術後に再燃・悪化した痛み
末梢血管障害(PAD)による痛み
  • 閉塞性動脈硬化症(ASO)
  • バージャー病
  • レイノー病・レイノー症候群
複合性局所疼痛症候群(CRPS)きっかけとな る原因に不釣合いな激しい持続痛
  • 反射性交感神経性ジストロフィー(RSD)
  • カウザルギー
その他の神経障害性疼痛
  • 脳卒中後の肩手症候群
  • 帯状疱疹後神経痛
  • 開胸術後疼痛
  • 外傷・放射線治療による腕神経叢損傷
  • 糖尿病糖尿病性ニュローパチー
  • 不完全脊髄損傷
  • 断端痛・幻肢痛
  • 多発性硬化症

メリットと期待される効果

メリット

  • 刺激電極のみ挿入して行う試験刺激(トライアル)で、ご自身で効果を確認できます。
  • もし、試験刺激で効果が感じられない場合や治療が不要になった場合は、元の状態に戻すことができます。
  • 患者さんの生活スタイルに合わせた複数の設定が可能で、痛みの変化に伴いご自身で刺激の調整が可能です。
  • 痛みの軽減を複数箇所で調整することが可能です。
  • 生活によりリードがずれても再調整することで対応することができます。
  • 痛みがやわらぐことでこれまで服用していたお薬の量を減らし、副作用の軽減が期待できます。

期待される効果

痛みが半減程度になれば効果があるとされています。

痛みを軽減することで少しでも活動的な生活が送れるようになることが期待できます。

脊髄刺激療法(SCS)で期待される効果

使用される機器について

脊髄刺激療法(SCS)で使用される機器
  • 1.リード(刺激電極)
  • 脊髄に電流を流すための電極が先端についている導線です。試験刺激(トライアル)では効果判定をするためリードのみが留置されます。
リード(刺激電極)
  • 2.刺激装置(ジェネレータ)
  • 回路と電池を内蔵しており、電池が消耗すれば、刺激装置を交換します。使用頻度に左右されますが、 目安は2年~5年程度です。(最近、充電式も使えるようになりました。)
刺激装置(ジェネレータ)
  • 3.リモートコントロール(患者プログラマ)
  • 患者さん自身が体外から刺激装置の上に当てて、刺激調節を操作可能になります。
リモートコントロール(患者プログラマ)

SCS治療の流れ

1.外来受診
自覚している痛みについて診療しトライアル(試験刺激)を行うかどうか診断します。

2.目標設定
トライアル(試験刺激)や本植え込みの内容、リスクについて詳しく説明し、同意を得た上でトライアルで痛みがどの程度抑えられるか確認し目標を設定します。

3.トライアル(試験刺激)
局所麻酔下でリードを硬膜外に挿入し、試験刺激を行います。痛みの 部位に刺激感を感じるよう患者様と話しながらリードの位置を決定します。試験用刺激装置を使用し、試験刺激(約1週間)を行います。

4-1.効果ありの場合/本植え込み
全身麻酔下で腹部等の目立たない部位に刺激装置を植込みます。

4-2.効果なしの場合/抜去
神経を傷つけることなく元の状態に戻せます

試験電極の入院の場合

入院(手術当日)

専用の針(硬膜外針)を使って、電極リード(刺激電極)を皮膚から脊髄硬膜外腔に挿入します

1週間

電極リード抜去

退院

埋込術の入院の場合

入院(手術当日)

背部と腹部を皮膚切開し、電極リードとジェネレータをそれぞれ埋め込みます

1週間

退院

試験電極→埋込術を1回の入院で行う場合

入院(手術当日)

背部を皮膚切開し電極リード挿入します

1週間

腹部を皮膚切開しジェネレータを埋め込みます

1週間

退院

脊髄刺激療法の注意事項

併用できない医療機器・治療

下記の医療処置または医療機器により、植込まれている刺激装置が損傷したり、重篤な傷害を引き起したりする恐れがあります。絶対に脊髄刺激療法と一緒に行わないでください。

  • ジアテルミ(温熱療法)
  • 磁気共鳴装置(MRI)※

※ MRI 対応植込み型デバイスを使用している場合は、当該機器のMRI 対応条件に従い検査することが可能です。

注意が必要な医療機器・治療

下記の医療処置または医療機器により、植込まれている刺激装置が損傷したり、動作への干渉をしたり、患者さんご自身に悪影響を及ぼしたりする場合があります。担当医師の指導に従ってください。

  • 植込み型刺激機器
  • 砕石術
  • 電気焼灼:単極焼灼器は使用しないこと
  • 体外式除細動器
  • 放射線治療
  • 超音波スキャン
  • 高出力超音波検査

日常生活における注意事項

刺激装置が植込まれていることにより日常生活に支障をきたす可能性は低いですが、強い電磁波を受けると刺激装置の電源が切り替わったり、激しい運動によりリードの位置がずれて効果が変化したりすることがありますので注意してください。

運動制限
重いものを持ち上げたり、激しい運動を行ったりすることで、リードの位置がずれる恐れがあります。リードの位置がずれると適切な刺激を得られなくなり、医師による再調整や再手術が必要となりますので、注意してください。
体位の変化
体を動かすことにより、リードの位置がごくわずかに動くことがあります。それにより刺激感が変化することがありますが、刺激装置が壊れているわけではありません。ただし、刺激の異常が感じられたら、担当医師に連絡してください。
家電製品
正常に作動し、適切に設置されているほとんどの家電製品および家庭用機器は刺激装置に干渉することはありません。ただし、家電製品が強い磁気を発生している場合は、刺激装置の電源が切り替わることがあります。
携帯電話
現時点では、携帯電話との相互作用のすべてが解明されているわけではありません。不安になった場合、または、問題が生じた場合は担当医師にご相談ください。
注意が必要な設備

以下の設備では急に刺激を強く感じるか、刺激装置のオン(入)とオフ(切)が切替ることがありますので、注意が必要です。

防犯ゲート
図書館や店舗などに設置されている防犯ゲートに近づく際には、あらかじめ刺激装置の電源を「オフ」にして、できるだけ装置から離れて通過します。防犯ゲートを通過したら、刺激装置の電源を「オン」にします。
金属探知機
空港などで金属探知磯による検査が行われる際には刺激装置が反応することがあります。検査を受ける前に患者手帳を提示し、手によるセキュリティーチェックにしてもらうよう依頼してください。ハンドヘルド型のセキュリティーワンドを使用することがありますが、刺激装置の植込み部分に当てないよう職員に申し出てください。
電気自動車の急速充電器、普通充電器
電気自動車の普及とともに充電器の設置が進んでいます。電気自動車の急速充電器、普通充電器に近づく時、使用するときには刺激装置の電源を「オフ」にします。また急速充電器を操作する必要がある場合は、できる限り他の人にお願いしてください。普通充電器を使用する場合、特に充電中は充電スタンドや充電ケーブルに密着する姿勢は避けるようにしてください。

よくあるご質問

Q.脊髄刺激療法は安全なものですか?
脊髄刺激療法は安全かつ効果が実証されている治療法です。 数十年にわたる実績があり、世界では35万人以上、日本では6,000人以上が治療を受けている治療法です。
脊髄刺激療法についてのリスクは主治医にご相談下さい。
Q.体に電気を流しても大丈夫ですか?
電気は直接痛みの部位を刺激するので、体の他の部分に悪い影響を与える事はありません。 また、微弱な電気なので、感電したりする事はありません。
Q.脊髄刺激療法で痛みが完全になくなることはありますか?
脊髄刺激療法で得られる鎮痛効果には個人差がありますが、多くの患者さんで痛みが軽減されます。 どの程度痛みが軽減するかは、試験刺激(トライアル)が参考になります。
Q.脊髄刺激療法を受けると、今までの疼痛治療はどうなりますか?
脊髄刺激療法で十分な結果を得られ、疼痛治療が必要なくなる患者さんもいらっしゃいます。 また、使用する疼痛治療薬の量が軽減される患者さんもいらっしゃいます。
疼痛治療薬の用法・用量については、必ず主治医にご相談下さい。
Q.副作用はありますか?
脊髄刺激療法では、一部の薬剤のような副作用はなく、ほとんどの患者さんに問題は起きていません。
何か異常を感じた場合は、必ず主治医にご相談下さい。
Q.運動は出来ますか?
リードの埋め込みから2カ月程度は位置のずれを防ぐための活動制限がありますが、それ以降は基本的に運動制限はありません。
激しい運動を行うとリードの位置がずれる可能性がありますので、主治医に相談するようにしてください。

費用について

70歳以上の現役並み所得者について

区分 自己負担
区分Ⅲ (月収83万円以上、課税所得690万円以上)252,600円+(医療費-842,000)×1%(多数該当時:140,100円)
区分Ⅱ (月収53万円以上、課税所得380万円以上)167,400円+(医療費-558,000)×1%(多数該当時:93,000円)
区分Ⅰ (月収28万円以上、課税所得145万円以上)80,100円+(医療費-267,000)×1%(多数該当時:44,400円)

※ 今まで70歳以上の方は特に申請をしなくても高額療養費が適用されていましたが、 現役並み所得者の区分Ⅰ又は区分Ⅱの適用を受けるためには限度額適用認定証の申請が必要となりました

診療案内

医療法人 誠馨会 新東京ハートクリニック
●受付・診療時間
  • 月曜日~土曜日(日曜・祝日は除く)
  • 午前 診察 9時00分~ (受付 8時00分 ~ 11時30分)
  • 午後 診察 14時00分~ (受付 13時30分 ~ 16時00分)
●心臓内科 朴澤医師 診察日
  • 火曜日:午後/金曜日:午前

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