「私の理想とする看護師像とは?」
現実と理想の乖離をどう縮める?第1回看護フォーラム

当院職員うち、その多くを占めている職種は看護師。患者さんとの接点が一番多いのも看護師です。コロナ禍で緊張が続く中ではありますが、原点に返り、他職種の職員とともに“大事な何か”を皆で見つけ合う、「第1回看護フォーラム」(企画:新東京生涯学習運営事務局)が上記をテーマに開催されました。(取材:医療支援課 丸山恭代)

看護部各部署の発表

6B病棟 H.Iさん

私の理想は「疾患を抱えながら生きる患者さんがその人らしく生活が送れるように共に考え支えることができる看護師」です。しかし、業務の中では患者さんにじっくり関わる時間や機会を作ることが困難に感じる時があります。この乖離をどうすれば軽減できるのかと考えた時、看護師だけではなく、同じく患者さんを支えていく医師、理学療法士、薬剤師、MSW、NSTなど他職種医療チームが連携し、知り得た情報を共有することで患者さん・家族がその人らしく生きていくための看護支援に繋げることができるのではないか、と思い至りました。理想を理想とあきらめず、チームの力でささやかな達成感を積み重ねながら、理想に近づけるよう努力していきたいと思います。

先生からのコメント

看護師のやり甲斐、神髄につながるお話。経験を積んでいくと、清拭などちょっとした時間で、患者さんの思いを引き出せるようになってきます。今後のIさんの成長、看護の進化に期待しています。

4A病棟 K.Fさん

脳神経外科、脳神経内科の病棟に勤務しています。今まで当たり前に出来ていたことが、突然出来なくなってしまった患者さんが多く、私は「患者や家族が安心して療養生活を送ることが出来るように身体的、精神的に支えることが出来る看護師。人として日常生活を送る中で当たり前に行うことを、療養生活の中でも当たり前にすることが出来るよう支援できる看護師、その環境が作れる看護師」を理想としています。患者さん一人ひとりに合った看護が大切なのですが、忙しさを理由に疎かになりがちなのが現状です。乖離を少しでもなくすためには「チーム内でカンファレンスを行い、認識を共有する。限られた時間内で、どう業務内に組み込めるかを考えて行動していく必要がある」と考えています。積極的にベッドサイドに行く、少しの機会を大切にしてご家族とも関わっていき、信頼関係を築きたいと思います。

先生からのコメント

心が洗われる真摯な発表に感動しました。理想の看護を明確に持っていれば、いつか辿り着けます。振り返る力があることも、とてもうれしかったです。

4B病棟 T.Sさん

「忙しいけど5分だけ!」と、退院したいと大声で訴える患者さんを、その先輩は外に連れ出し、患者さんは落ち着きを取り戻しました。「忙しい中でも日常生活や清潔ケアを通じて患者に寄り添った看護ケアを提供できる看護師に」とこれが理想像になりました。今は中堅の立場となり事務作業等も増え、理想とのギャップを感じることもあります。でも自分が理想を追うだけが本当に患者さんのためになるのでしょうか? 理想像に添った看護を後輩やチームへ伝えていくことができれば、直接的に患者さんとの関わりがなくても、より良い看護が伝播していくと思われます。そのためには、新人教育やチームでのカンファレンスなどを活用し、伝えていきたいと思います。

先生からのコメント

自分の理想とする看護をチーム全員が実践してくれたら…。あなたは次の一歩を踏み出していますね。ぜひ頑張ってください!

2C病棟 A.Yさん

私の理想は「患者さんの訴えに耳を傾け、会話の内容や表情、様子から異常の早期発見ができ、速やかに上司や医師に相談ができ臨機応変に対応できる。常に患者さんの立場に立って物事を考え、患者さんに信頼される。正確な知識と技術を持ち、症状や検査データなどから患者さんの状態を正確にアセスメントできる看護師」です。そのための決意表明として、苦手な分野や不十分だと感じていることは勉強会などに積極的に参加したり、自分でも勉強して知識を身につけるとともに未経験の技術にも積極的に取り組みます。また少しの時間でも患者さんと話をする時間を作り、小さな変化に気づけるようにします。理想に近づけるよう日々精進していきます。

先生からのコメント

「小さな変化に気づく、これは本当に大事なことです。気づいたら、必ず声に出して患者さんに伝えてください。『私を見てくれている』と信頼関係が生まれます。

手術室 Y.Sさん

「学びに対して直向きな姿勢を持ち続ける」。これが私の理想とする看護師像です。入職した頃「3年目には様々な科の症例に対応し、確かな技術と知識を持ち合わせている」を目標としていましたが、思い描いていた3年目とはかけ離れているのが現状です。自分なりに患者さんの負荷を軽減したつもりでも、最善の方法は別にあり、先輩が一緒に医師に相談に行ってくれたり…。まだ知らない、わからないことがたくさんあります。もっと新しい知識や考え方を学び、患者さんの役に立ちたい。そのために常に直向きに学ぶ向上心を持ち続けたいと思っています。

先生からのコメント

私も手術室の経験がありますが、3年目などまだまだです。でも、患者さんに対して自分のベストを尽くすことならすぐできますよね。素敵な先輩に出会っていることを幸運に思い、自己評価を下げずに手術室看護の面白さを発見してください。

外来 Y.Nさん

「患者さんに寄り添えるだけではなく、この看護師さんでよかったなと思ってもらえるような看護師」を理想にしています。現在、外来で化学療法センターを担当していますが、力量不足を感じながらも患者さんの話を聞くだけでなく、信頼関係を築くことが大切だと感じています。信頼関係があれば、コミュニケーションが円滑になり、納得して前向きに治療に取り組んでいただけるようになるからです。

先生からのコメント

患者さんの不安がないよう、真摯に考えていることが伝わってきました。患者さんのフィードバックをキャッチすることで、自分の自信につながり、看護師が自信を持って話すことで患者さんは安心する、という好循環が生まれます。

他部署より考える“こうあってほしい看護師像”

診療部 S.Yさん

医師も看護師教育に関わり、看護師も医師教育に関わるべきだと考えています。お互いにそれぞれの仕事をよく理解することが大切だと思います。患者情報を一番持っているのは看護師です。その情報をチームで共有し、相互理解を深めながら仲良く、患者さんのために良い医療をどんどんやっていきましょう。

MEサービス室 K.Oさん

MEから見た理想の看護師像は、患者さん一人ひとりにあったフィジカル、メンタルなどのケア、サポートをしていくこと。そこで得た情報を多職種間に共有していくことです。MEはメカニカルで患者さんのサポートをしますが、自分たちだけで業務はできません。患者さんの近くにいる看護師さんの情報というのが大変重要です。MEの業務は看護師さんがいるからこそ成り立っているのでいつも感謝しています。

薬剤部 R.Mさん

今回のテーマを聞き「コミュニケーションを取ることができる看護師」というのが一番に頭に浮かびました。もちろん私たちも「コミュニケーションを取ることができる薬剤師」でいなければならないと思っています。なぜなら重要な3つのこと、①患者の主訴⇒薬の効果や副作用の早期発見 ②患者の理解力・服薬状況⇒薬の管理方法の見直し ③患者の人柄や家族との関係⇒服薬指導時の対応と工夫 これらは看護師との連携なしにはできません。「できるだけ顔を合わせて直接会話を」「まずは名前を覚えることから始めても…」を提案したいと思います。

看護師・他部署発表者感想

4B病棟 T.Sさん

看護師になって6年目、振り返る機会をいただき、病棟での自分の役割をあらためて認識することができました。発表に当たっては、師長と先輩から貴重なアドバイスをいただき感謝しています。発表後、「成長したね!」とお世話になった方から声がけいただいたのもうれしかったです。次回以降は「コロナ禍での看護について」を取り上げてほしいです。

MEサービス室 K.Oさん

良かったところは、患者さんを看るに当たって、大切にしていることがそれぞれの看護師さんにあって、どういう思いで向き合っているのかを知ったことです。また、薬剤部とはあまり接点がなかったので、話を聞く機会となったことも良かったです。改善点としては、次回は別の職種でも共有できたらいいな、と思いました。

新旧看護部長感想

前看護部長 K.Hさん

若手からリーダー層が、自分の言葉でどんな看護が大事なのか話してくれたのを聞いて、すごく新鮮でした。また、他部署の人たちが看護職をどう見ているかというお話も本当に温かく、皆が前を向いて行こうという思いになれた時間だったと思います。そして松月先生、榎本先生からは「いいところはいい」と意味づけて、立ち止まって考えられるようにコメントしていただき、発表者だけではなく、聞いている人たちにもメッセージを伝えてくださった。実にありがたく思いました。

新看護部長 M.Kさん

初めての試みで、最初はどうなるかと思いましたが、皆、思いがたくさんあって、聞く側も一緒に新鮮な気持ちになって、初心に戻れた心温まる会でした。外部の先生方からは普通ではいただけないお言葉をいただき、発表者もうれしかったと思いますが、周りのベテランたちにとっても刺激的でした。今回、医師、MEさん、薬剤師さんがお話しくださいましたが、彼らもすごい。新東京のチームとしての可能性を感じさせられました。きっと感動しながら泣いている人もいたと思います。今後もぜひ続けていきたいと思います。