創傷治療センター

文献が残っている限りでもっとも古い外科手術は、紀元前800年代古代インドの造鼻術で、鼻削ぎの刑を受けた人々の外鼻を再建したものです。この方法は前額正中皮弁という方法で現在の形成外科でも各種の顔面組織欠損の再建に用いられる方法です。近代形成外科の発展は20世紀初頭、第一次世界大戦での負傷兵の顔面外傷や組織欠損を皮弁術を駆使して治療したH. Gillies (英) の功績によるところが大きく、彼は近代形成外科の父と呼ばれています。 このように形成外科は体表組織欠損の治療、すなわち“キズを確実に治す”という命題のもと発展してきました。その治療は単なる傷の縫合だけでなく、遊離植皮術、有茎皮弁術、血管吻合を伴う遊離皮弁術など様々な組織移植の技術を用いて行います。最近では、陰圧軽鎖療法やPRP療法など手術以外の治療法も進歩を見せています。

現代社会においては、怪我や手術でできたキズだけでなく、高齢化に伴いなかなか治らないキズ、すなわち“慢性創傷(難治性皮膚潰瘍)”が増えています。慢性創傷とは、キズを治りにくくする基礎疾患に併発したもので、糖尿病性潰瘍や壊疽、閉塞性動脈硬化症などによる四肢の血行不良に伴う虚血性潰瘍や壊疽、全身の活動性低下や栄養不良による褥瘡、静脈瘤による下腿潰瘍などです。その治療は基礎疾患をいかに適切に治療できるかにかかっています。基礎疾患の治療ができていない状態で、いかに創傷治療を行っても良好な治癒は望めません。複数の基礎疾患を合併していることも珍しくありません。また慢性創傷を持った患者さんは、基礎疾患がすでに進行しており心臓、腎臓など重要臓器の機能低下を来していることがほとんどです。よって大切なのは必要な複数の診療科がチームをつくり、一体的な治療を行うことです。さらには治癒後の再発予防やリハビリテーション、退院後の近隣病院との連携も生活の質維持のため重要な役割があります。新東京病院創傷治療センターはその目的を果たすためのチーム医療を実践してまいります。

センター責任者

吉田 龍一

形成外科・美容外科部長吉田 龍一

 
  • 日本形成外科学会認定専門医
  • 日本形成外科学会認定皮膚腫外科分野指導医
  • 日本創傷外科学会認定専門医
  • 日本臨床皮膚外科学会認定専門医、評議員

創傷外来 治療のながれ

まず病歴、診療所見を確認し、基礎疾患の存在が疑われる慢性創傷か、基礎疾患のない外傷などによる急性創傷かを区別します。基礎疾患のない急性創傷ではそのまま創傷の治療を開始します。

基礎疾患の存在が疑われる場合は、採血(糖尿病などの確認)、四肢血流評価(ABI、SPP測定、超音波検査やCT、MRIによる血管開存性の確認)などを行い基礎疾患の検索をします。慢性、急性ともに創部感染が疑わる場合、細菌培養検査、MRIによる骨髄炎評価などが必要になります。

基礎疾患が見つかった場合はその治療を行いますが、特に四肢の血行不良がある場合、心臓内科もしくは心臓外科での血行再建を最優先で行い、血行改善後に創傷の治療を行います。また血行不良で心臓内科に来院された患者さんに創傷が見つかり、創傷外来と併診となる場合も多くあります。入院治療では、リハビリテーション科、必要な場合は透析室などと連携のもと治療いたします。

創傷治療センターにおけるチーム医療

スタッフ紹介

創傷外科担当 吉田 龍一(形成外科・美容外科部長)
血管内治療担当 朴澤 耕治(心臓内科 末梢血管疾患治療部長)
血管外科・静脈瘤担当 中尾 達也(心臓血管外科 主任部長)
糖尿病担当 周 聖浦(糖尿病内科医長)原口 美貴子
リハビリテーション担当 西 将則(リハビリテーション科部長)
フットケア担当 石井 裕梨(皮膚・排泄ケア認定看護師)

外来受診のご案内

形成外科外来表をご確認の上、吉田担当の外来を受診ください。
緊急を要する場合はその限りではありません。紹介状は無くても受診できます。

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