呼吸器外科 河野 匡 インタビュー

がんの手術後も元気で暮らせる治療を行っています

呼吸器外科
Cardiology
副院長 兼
主任部長 
河野 匡
Kono Tadasu

転移性のがんでも手術で治るケースもあります

呼吸器外科は肺など呼吸器の手術をしています。最も多いのは肺がんで、早期肺がんを治すことを目指しています。早期肺がんの患者さんに30年、40年先も元気でいてもらうための治療です。次に多いのは、転移性腫瘍の手術です。大腸がんにはゆっくり進行するものがあって、大腸がんが肺に転移することがありますが、肺に転移したがんを切除すると大腸がんが治るケースがあります。僕がかつて大腸がんの手術をした患者さんはその後、肺に2つの転移が見つかったので、それを取りました。それから今度は肝臓がんに転移が見つかり手術をしましたが、7、8年は再発していないので、恐らくもう大丈夫だと思います。

このほか、縦隔(左右の肺に挟まれた部分)にある胸腺にできた腫瘍の手術や自然気胸の手術などをしています。
がんの手術だと働いている臓器を切るので、がん細胞は取り除けたとしても、手術後の臓器の状態は手術前よりも働きが悪くなるのはやむを得ません。悪くなるのを少しでも食い止めるために患者さんの負担が少ない低侵襲手術をしていますが、患者さんが無事に退院し、その後も元気な姿を見せてくれると嬉しくなります。

丁寧に説明することを心掛けています

手術を受けるのに不安にならない人はいませんから、どのような手術になるのかについては丁寧に説明するようにしています。臓器の構造を絵に描いたり、なるべく専門用語を使わないようにしたりして、分かりやすく伝えるように心掛けています。手術や治療の方針を決める時や患者さんとの接し方を考える時、患者さんが自分の家族だったらどうするかということを常に意識しています。丁寧に診ることは、命を預かる医師の基本だと思うからです。
年上の患者さんには目上の人に接するように、年下でもできるだけ対等に接しようと思っています。そうすると患者さんは案外、世間話をしてくれるようになります。外来はなかなか時間がありませんが、可能な限り世間話をして患者さんとの関係づくりをしていきたいと思っています。

手術のほとんどは高齢者で、80代で手術をする患者さんがたくさんいます。僕の小学校の校長先生は93歳で肺がんの手術をしました。僕が執刀しましたが、退院してからも電動アシスト自転車を買って近所で乗り回していました。このように高齢でも手術を受けて元気に暮らしている方が増えています。

呼吸器外科の場合、女性に比べて男性の患者さんが多いのですが、これは喫煙率が影響しているのかもしれません。

がんのリスクを減らすには禁煙も必要です

喫煙の影響は20年、30年後にでてきます。今の50代、60代の喫煙率はかなり下がっていますが、肺がんに限った場合、完全喫煙してから肺の機能が回復するまでに15年かかると言われています。アメリカでも日本でもたばこの売り上げと肺がんの増加は、ほとんど並行しています。アメリカはたばこの売り上げの減少に伴い肺がんも減っていますが、日本はたばこの売上が減ってはいるものの、肺がんの減少にまでは至っていません。アメリカではたばこの売り上げが減った15年後に肺がんが減り始めています。ですから喫煙している患者さんには口酸っぱく、顔を見るごとに禁煙をするように言っています。

診療科を超えた治療ができるのも当院の利点です

当院は心臓疾患に強い病院ですが、心臓の病気も肺の病気と同じくたばこが原因で発症することがたくさんあります。例えば心臓病の患者さんが肺がんになるといったように、心臓と肺の両方を治療しなければならないケースが意外と多くあります。がんの専門病院は難しいがん治療をしてくれますが、診てもらえるのはがんだけです。でも、新東京病院はがん以外の病気の治療も併せて受けられます。ですから当院のように複数の診療科がある病院は、いろいろな病気に対応できるという病院の利点を最大限に生かしていると言えます。

医療サービス向上へ 外科医の育成に取り組んでいます

現在、若くて優秀な外科医を育てることを目標にしています。僕はこれまでに7500件程の手術をしてきましたが、2人いればもっと多くの患者さんの手術ができるようになり、いいサービスを提供できるからです。若くて優秀な外科医が増えることは当院だけではなく、日本の医療の向上にもつながっていきます。そのためにも外科医の育成は重要なのです。

怖がらず手術を前向きにご検討ください

肺がんの手術を怖がっている方も多いと思いますが、治りそうながんだったら、手術が一番確実で早く元気になれる治療なので、お勧めします。何が早いかと言うと、例えば午前中に肺の手術をした人がその日の夕飯を食べられるのです。食べることは人を元気にするので、とても大事です。確かに手術で肺が減ると苦しくなることもありますが、肺は鍛えられるので肺活量は増えていきます。
医学の進歩とともに手術は負担が少なく、安全になっています。ですから手術をそれほど深刻に考えず、医師から勧められたら治療の選択として前向きに考えてもらっていいと思います。セカンドオピニオンのご相談にも乗りますので、何でもお聞きください。