心臓血管外科 中尾 達也 インタビュー

技術で心臓を治すだけでなく、患者様の心も治す医療を目指して

心臓血管外科
Cardiovascular Surgery
副院長 兼
心臓血管外科主任部長
中尾 達也
Nakano Tatsuya

子どもの頃の臨死体験が医師を目指すきっかけに

私は小学校4年生のときに車にはねられ、頭蓋骨と大腿骨を骨折し、4ヵ月入院をしました。入院して2日間は意識が戻らず、その中で臨死体験を経験。そんな不思議な導きもあり、医師への道を志すようになります。広島大学の医学部を卒業してから、さまざまな病院にて外科や小児外科、救急医療、心臓外科などで経験を積みました。特にJA広島総合病院でお世話になった心臓外科の恩師からは、世界に目を向けることの大切さや、患者様に信頼される医師とは何かを学び、心臓外科医として成長していくきっかけをいただきました。

その後、圧倒的に症例数が多い一流の施設で勉強するために、ニューヨークとオーストラリアの病院へ。私が勤めていた病院には世界各国の医師たちが学びに来ており、彼らとは病院内で苦労を共にしてきました。彼らの国や民族、年齢、立場を超えて、お互いにリスペクトし合う姿には、いたく刺激を受けました。これこそが、医師としてあるべき姿だと。医師の前に、人間として成熟することの重要さを実感することができました。今振り返っても海外での経験は、私の仕事観に大きな影響を与えてくれたと思います。

安全性の高い手術、豊富な手術実績が当院の強みです

心臓血管科は文字通り、心臓と血管を診ている科です。昨今では大血管手術症例の著しい増加とともに、低侵襲の心臓手術(MICS)とともに大血管手術も増加してきました。低侵襲とは、従来の人工血管置換術よりも傷口が小さく済み、身体的な負担が軽い手術法なので、高齢者や他の心疾患合併で同時手術を要す患者様でも安心です。

私が心臓外科医になって30年。その中で、手術で使用するデバイスも進化を遂げてきました。中でも国産ステントグラフトの誕生は、心臓外科業界の発展に大きく寄与しました。日本のオープンステントグラフト法は手術成績も高く、私はオープンステントグラフトのプロクター(指導医)として、台湾をはじめとする海外に技術を広めています。

命を預けてくださる患者様とのご縁を大切に

患者様が心臓の手術を受けてくださるということは、言い換えると、自分の命を預けてくださるということです。心臓の手術を受ける患者様は、手術前も手術時も手術後も、そして退院した後も不安が付きまとうもの。技術を駆使して患者様の心臓を治すだけでなく、心を治すことも私たち心臓血管科の役目だと考えています。そのため、患者様とは信頼関係をしっかり築いた上で、手術に臨めるよう最大限努力を尽くしています。私は、病院に来ない日はありません。土曜日も日曜日も病院に顔を出します。なぜなら、病と闘う患者様には土曜日も日曜日もないからです。患者様の状態を見ないと安心して眠れない、これは一つの職業病かもしれません。

私が仕事をしていて一番嬉しいのは、「先生の顔を見たら安心しました」「先生の言葉を聞いたらホッとしました」という患者様の言葉です。中には「先生に握手してもらうと、もう一年長生きできる気がする」と笑顔を見せてくださる方もいます。患者様とは手術をして終わりではなく、ここで出会ったご縁を大切に、長く関係性が続くといいなと願っています。

前向きな気持ちで病と向き合える、心のこもった医療を

当院には、非常にレベルの高いドクターが数多く集っています。心臓血管科をはじめ、外科、呼吸器外科、脳神経外科、泌尿器科、消化器内科など、それぞれの分野を究めた一流のドクターたちばかりです。お互い同志のような関係を築き、ときには刺激し合いときには連携しながら、非常にクオリティの高い治療サービスを患者様に提供することができています。患者様と信頼関係が築ける“心のこもった医療”を掲げているので、技術力はさることながら人間的にも魅力的なドクターが多く、安心して治療を受けていただけることと自負しています。

私は患者様の生活習慣に対して「これはダメ」「あれはダメ」と言うことはありません。大きな手術を受けた患者様に、ストレスが溜まるような指導は良くないと考えているからです。ご家族に対しても、患者様には「次はこれをしてみましょう」「今度はあそこに行ってみましょう」と伝えていただくようお願いしているので、前向きな気持ちで生活をしていただけると思います。

加えて、新東京病院は千葉県内でエホバの証人の心臓病患者に対して、唯一心臓手術を提供できる施設です。これは、日頃の手術で無輸血手術を心掛けている結果として実現できていることだと考えています。

心臓外科医として歩んできた道筋を、孫の代に引き継ぎたい

これからも患者様が元気になる治療はもちろん、一日も早く普段通りの生活が送れるように、常に新しい情報を取り入れ、最適な治療を模索していきます。私は日本やニューヨーク、オーストラリアの病院で、濃密な時間を過ごしてきました。その中で、患者様の命を救う高いレベルの技術と、患者様から信頼を寄せていただく人間力を磨いてきたつもりです。これからも心臓外科医として、これまでに交流のあったドクターたちと切磋琢磨し合いながら、さらに高みを目指していきたいと考えています。

私には孫がいるのですが、願わくば彼にも心臓外科医を目指してほしいと思っています。そして、自分の手掛けてきたことや歩んできた道筋を、孫の世代に引き継ぎ、心臓外科を発展させる一翼を担うことが私の目指すところでもあります。