形成外科・美容外科 柳林 聡 インタビュー

形成外科がお役に立てることはもっとたくさんあります

形成外科・美容外科
Plastic Surgery
主任部長
柳林 聡
Yanagibayashi Satoshi

体の表面のあらゆる異常を治療するのが形成外科です

形成外科が確立されてまだ60年余りしか経っていないこともあり、形成外科はどんな病気を治療するところなのかご存知ない方も多いと思います。簡単にご説明すると、形成外科は体の表面のあらゆる異常を治す診療科です。潰瘍や変形、欠損などに対し、機能はもちろん形態的もきれいに美しくすることによって、生活の質の向上に貢献できる外科系の専門領域です。 皮膚腫瘍や皮下のできもの、顔面の骨折、熱傷などの一般的な形成外科疾患はもちろんですが、当院が特に力を入れているのは(1)手に関するお悩み、(2)高齢化社会に伴って増加している足壊疽の治療などの下肢救済外科、(3)美容外科の3つです。手術実績は年間3000件を超え、全国では大学病院も含めてトップ10に毎年入ります。

子どもの頃にしたけがの手術と入院経験が形成外科医を志すきっかけに

5歳の時のけがが原因で、私は中学2年生頃まで入退院を繰り返していました。大きな手術も受けたので、主治医の先生からはスポーツ選手になるのは諦めるように言われました。でも、野球が好きで諦めきれずに続けました。そんなある日、医者の言いなりばかりでは何も進歩しないと思い「高校野球のレギュラー」という小さな目標を設定しました。高3の夏、それは何とかかないました。先生の言っていた「スポーツ選手」とはプロレベルだったのかもしれません。しかし、それをそのまま受け入れて諦めるのではなく、うぬぼれでは決していけませんが、やれる!と信じて諦めずに努力をすれば大きな進歩があるんだと心から感じた出来事でした。

この貴重な経験を生かすしかないと思い、医者になりたい気持ちが一段と強くなったのを覚えています。なんと、子供のころにお世話になっていた先生が、偶然にも私の母校の形成外科の教授になっていたのです。それが大きなきっかけとなり形成外科医になりました。本当は心臓外科医か脳外科医になりたかったのですが、子供の頃に自分が世話になった診療科に進むことになったわけです。運命ともいえる出会いでした。

患者さんとの信頼関係をしっかり築いて最善の治療につなげます

医師は入院患者さんにとって、頼られる存在でなければならないと思っています。私も入院していた時、主治医がベッドサイドに来てくれるだけで子供ながらに何とも言えない安堵を感じていた記憶があります。ですから私も、特に治療はなくともなるべく患者さんの所に足を運ぶようにしています。 外来診察では、患者さんが診察室に入ってくるときの表情や歩き方、正面に向き合った時の表情や顔色などを注意深く見るようにしています。医師に対して患者さんも忖度してしまうことがありますので、小さなサインを見逃さないようにしています。また、病院に来られる方は、皆が説明上手ではありません。患者さんの訴えをしっかり引き出すように心がけています。

忙しいとつい急がせてしまうこともありますが、病院に来る患者さんには「その方にとってそれ相応の症状や不安感などの病院にかかりたい理由があるから来ている」ということを医師は忘れてはならないと強く思っています。 わかりきっているような疾患であっても、必ず患者さんの訴え部位を確認するようにしています。手が痛いと言えば、必ず手を触ってしっかり確認します。ホクロの相談であれば、そのホクロをまじまじと診察します。必ず触診もします。話をさっと聞いて、時には遮るように「あ、これね!…なので問題ないですよ」というような診察はしないようにしています。しっかり触れて診察することが何よりも大切であり、思わぬ気づきもあります。さらに、信頼関係の構築にも役に立つと思っています。

自分の家族のつもりで患者さんの治療に当たることをモットーに

時間をかけて治療したいと思う一方で、それを実行すると外来の待ち時間が長くなってしまうので、それが私の一番のストレスになっています。形成外科は体表外科ですので、急患で来られた傷の縫合処置や、おできの膿を麻酔して洗い出す処置などが重なると、予約の患者さんであってもお待たせしてしまうことになります。そこに、手術の説明が入ったりすると大変なことになってしまいます。この忙しさは他科にはない特徴だと思います。事情をご理解いただいてお待ちいただける患者さんが多いことには大変ありがたく思っています。

お待たせした分、しっかり時間をかけて診察しようとするとさらに待ち時間が長くなってしまうという、大きな悩みを抱えています。関係各所と相談し、早期に解決できるように努力していきます。 コミュニケーションの重要性は、医師同士にも当てはまります。どんなに設備が整った大きな病院でも医者同士の横のつながりがなければ縦割りになってしまい、いい治療につながりません。当院は診療科を超えた横の連携が素早く、さらに医師も含めてスタッフ全員が、患者さんを自分の家族だと思って治療に当たっています。

形成外科の守備範囲は広いので、気になることがあればご相談ください

皮膚のできものは皮膚科で切除というのが当たり前でしたが、メスを持たなくなった皮膚科の先生方が増え、その分形成外科で治療をすることが多くなりました。我々は悪性腫瘍についても診療ガイドラインにのっとった治療をしっかりと行えています。さらに、非常に大きな腫瘍であっても拡大切除して即時再建まですることができ、また所属リンパ節郭清にもしっかり対応できるというメリットが形成外科にはあります。

当院には小児病棟がありませんので、新生児疾患には対応できないこともありますが、それ以外の疾患・外傷には小児であっても対応可能です。皮膚軟部組織のできものや、熱傷、治らない傷、手の外科、美容などなど対象疾患は多岐にわたります。私自身は手の外科が専門ですので、挫滅や切断などの重度外傷はもちろんですが、最近は更年期と手の疾患の関連や、手のしびれ・痛み、手指の骨折、腱・靱帯損傷などに重点を置いて診療しています。 どの科で見てもらえばいいのだろうとお悩みの場合は形成外科を受診してみてください。何かお役に立てることがきっとあると思います。