救急科 安倍 晋也 インタビュー

一刻も早く患者さんの苦痛を取るのが救急科の務めです

救急科
Emergency
部長
安倍 晋也
Abe Shinya

患者さんの無言のSOSを見逃さないようにしたい

救急医療は救急外来の看護師や診療放射線技師、臨床検査技師といったさまざまな医療職種と、事務部門のスタッフが力を合わせチーム医療で患者さんの命を救うために戦っています。救急車で運ばれた患者さんには意識がない方もいますし、意識があっても言葉に出せない方もいます。患者さんの表情の変化を見たり、体温や脈拍、血圧や呼吸数などのバイタルサインや血液・画像検査結果を見たりして、患者さんの無言のSOSを見逃さないようにしています。 救急外来に搬送される患者さんやご家族は、突然起こった病気やけがで、ご自身の本意ではない形やタイミングで受診されています。ですから、痛みや辛さ以外にも精神的に驚きや不安、怒りなどを抱えていらっしゃいます。

そのような患者さんに対して、なるべく信頼していただけるように丁寧に接することも大切ですし、さまざまな考えをお持ちの患者さんもいらっしゃるので、それぞれの患者さんを尊重することにも配慮しながら、1分1秒でも早くその苦痛を取り、患者さんの笑顔を取り戻したいと思いながら治療に当たっています。

患者さんの笑顔が励みになっています

私は人が好きで、高校生の時に人の役に立つ仕事がしたいと思いました。純粋に人を救うことに興味を持ち、医師に魅かれたように思います。救急科を選ぶまでに最後の最後まで悩みましたが、オールラウンドにさまざまなけがや病気に対応できて、大変だけれどやりがいがある診療科と思って決めました。 大学の医局では救急医としての勤務の前に、入院や手術といった経験を他の診療科で積むことを勧められていたので、私は消化器外科を選びました。その中で手術を含むがん患者さんの診断や治療、末期がんの患者さんの緩和医療などを経験しました。外科で5年間研修し、栃木や横浜、川崎、東京などの日赤、済生会、公立病院や大学病院といったさまざまな病院で、たくさんの患者さんや医療スタッフと出会うことができ、刺激を受けました。

救急医になってからもたくさんの患者さんを診断、治療してきましたが、意識がない状態で搬送された重症な患者さんが、元気になって退院する際、挨拶に来てくださることがあります。そんな時、私が「私の顔、二度と見ないようにして下さいね」と言った瞬間に見せてくれる患者さんの笑顔が、とても嬉しいです。 以前、認知症で屋外を徘徊したまま行方不明になったお年寄りが路上で倒れてしまい、身元不明のまま低体温症で当院に運ばれてきたことがありました。最初はご自分の名前も言えませんでしたが、治療をして徐々に回復すると、少しずつ言葉が出始めてきたのです。身元が判明するキーワードも出てきたので、それを看護師やソーシャルワーカーが拾い上げていった結果、ご家族から捜索願が出されていたことが分かり、無事にご家族と連絡がつき、ご家族と共に歩いて退院されました。院内のチーム医療が功を奏したわけですが、私も受け入れの際に関わったので嬉しく思いました。

救急の患者さんを断らない方針を徹底しています

新東京病院の良さの一つに、院長の強いリーダーシップの下、各診療科の先生が救急の患者を断らない方針を徹底していることがあります。緊急の時でもみんなでサポートする体制がきちんとできているので、その成果が救急患者さんを数多く受け入れているという数字に表れているのだと思います。しかも伝統的に心臓に強い病院なので、心疾患の患者さんが救急車で運ばれた際には、心臓内科、心臓外科、麻酔科の先生たちが迅速な対応をされ、手術室やカテーテル室での緊急手術・緊急心臓カテーテル治療を行っています。心臓に限らず、各診療科のスペシャリストである先生たちが高い技術で、患者さんを絶対に救うという姿勢が伝わってきます。検査体制も優れていて、緊急MRI検査ができない病院がたくさんある中、当院は優秀な診療放射線技師がいて緊急でも撮影できます。

診断治療する際にすごく役立っていて、とても頼りにしています。ですから救急科としても重症の方を受け入れたら、各診療科の先生方が最善のタイミングで最適な治療が行えるように最善を尽くしたいと思います。緊急でもいい医療ができるのは、こうした環境が整っているからです。

患者さんのために、これからも全力で戦います

1分1秒でも早い診断、早い治療をして患者さんの苦痛を取ることをこれからも進めていきたいですし、私だけで治療できないような患者さんも当院の他の診療科の先生方による根本的な治療にできるだけ早くつなげていけるよう努力します。それが結果として、当院を受診する全ての患者さんに対して、いい医療を提供することにつながります。こうした仕組みの中で私の役目が果たせたらいいと思います。 将来的には救急部門の医師・看護師をもっと手厚くして24時間365日、より多くの患者さんを受け入れるのが理想です。そのためには医師・看護師の仲間を増やすということも今後は考えていきたいと思います。今もそうですが、いい仲間がいるからこそ多くの患者さんにいい医療ができると思うからです。 このような体制を整えていますので、急な病気やけがでお困りの時は、ぜひ新東京病院の救急外来にお越しください。全力で対応させていただきます。