実績

呼吸器外科 2022年度実績

2022年度も新型コロナウイルス蔓延の影響を強く受けた年になってしまいました。2021年度まではそれでも手術症例数を増加させることができていましたが、2022年度は減少に転じてしまいました。スタッフの新型コロナ感染や手術室のスタッフ不足による手術制限などもあって12月には手術症例数が2020年5月以来の一桁にまで減少しました。

さらに、2021年度では蔓延が収まった時期には手術症例が20例を超えた月が3回もありましたが、2022年度では20例を超える月はありませんでした。手術室のスタッフ不足による手術制限も影響としては大きかったように思います。手術の内容としてはそれでも延期することのできない原発性肺がんや転移性肺腫瘍は過去最高の年度になり、進行の遅い縦隔腫瘍や延期できる自然気胸の手術が減少しました。

ただコロナ慣れなどもみられ、患者さんもやや遠方からもみえるようになりました。2021年度には遠方といっても埼玉県、神奈川県、東京都程度でしたが、2022年度には北海道、広島県、山口県や大連からの患者さんも当院で手術を行うようになりました。

2022年度は合計179件、月平均で14.9件の手術を行うことができました。昨年度は自然気胸手術の増加と縦隔腫瘍切除術の増加が全体の数を押し上げましたが、今年度はそれらの手術の減少が響いてしまいました。近隣の先生方と改めて連携をとることが大切だと痛感しております。

呼吸器外科 2021年度実績

2021年度は新東京病院の呼吸器外科は開設3年目になりました。初年度は手術件数が153件、2年目は184件で月平均にすると初年度か12.75件、2年目は15.33件と増加しており、2021年度もさらなる増加を期待しておりましたが、新型コロナウィルスの蔓延が相変わらず影響したと考えられ、全体で195件では月平均だと16.25件とわずかな伸びにとどまりました。2021年度も出血による再手術などはありませんでした。

手術を受けていただく患者さんの年齢層は相変わらず高齢化し、最多の年齢層が70歳代なのは不変で、2番目が昨年とは異なり60歳代になりましたが、80歳代も32名、90歳代では前年は手術がありませんでしたが、2名の手術を行いました。麻酔科や他の診療科のサポートもあって高齢者の手術も安全に行えていると考えています。

手術対象疾患としては原発性肺がんが最も多いものの症例数は伸び悩み、割合も45.6%に減少しました。転移性肺腫瘍の切除もほぼ横ばいでしたが、自然気胸の手術は増加して前年の28件(15.2%)から34件(17.4%)に増加しました。また縦隔腫瘍切除も倍増して29件(14.9%)になりました。近隣の施設との連携が次第に進んできていることが関係していると思います。

手術術式としては前年で減少した肺葉切除がまた増加してきて区域切除がやや減少したように思います。これは、早期肺がんに対して切除範囲を縮小することがあるものの、多くは呼吸機能などの全身状態が十分でない方に縮小手術として行うことが多いので、標準手術を行える方が多かったものと考えております。

今後もできるだけ低侵襲にとは思いますが、標準開胸や人工心肺を使用する手術も行う幅広い適応で症例を受け入れていきたいと思っております。

呼吸器外科 2020年度実績

2020年度は新東京病院の呼吸器外科としては開設2年目ということになりました。開設初年度の2019年度には全体で153件、月平均ですと12.75件の手術症例がありましたが、2020年度に入ると新型コロナウィルス蔓延の影響での受診控えや検診が事実上休止した影響を受けてしまったように思います。また、2019年度では広島、三重、長野などの遠方からお見えになっていた方がお見えにならなくなってしまったことが影響したと考えます。4月には11件、5月には8件にまで手術症例が減少してしまいました。6月からはやや持ち直して、2020年度としては184件、月平均では15.33件の手術症例がありました。幸い、出血による再手術、手術関連死亡はありませんでした。

年齢的にはやはり高齢化の影響が考えられ、高齢者の手術症例が多く、2019年には70歳代が35.3%、60歳代が20.3%、80歳代が14.4%という順でしたが、2020年度では最多は変わらず70歳代で40.8%でしたが、次は80歳代で25.0%、それに次いで60歳代で16.8%となっておりました。高齢者であっても安全に手術が行えていると考えております。

疾患としては原発性肺癌が2019年度では52.3%であったものが2020年度では48.9%とわずかに減少したものの、一般病院としては標準的なところに落ち着いているように考えております。自然気胸や血胸の手術は2019年度の17.0%から2020年度の15.2%と一般病院としてはやや少なめで、近隣の医療機関との連携がまだ課題であるように考えています。縦隔腫瘍は2019年度に9.2%で2020年度では6.0%でしたが、ほとんどの縦隔腫瘍を完全胸腔鏡手術で切除しながら、心臓外科との協力で人工心肺を使用しての切除手術を行うなど幅広い対応力をさらに広報していかなければならないと考えています。

手術術式としては肺葉切除が2019年度の34.0%から2020年度には23.4%に減少し、区域切除が2019年度の13.1%から2020年度の19.6%に、部分切除が2019年度の39.2%から2020年度の46.7%とそれぞれ増加しました。標準術式の肺葉切除術とリンパ節郭清の割合が減少した理由としては、非常に早期の症例を切除範囲を縮小して行うこともありますが、むしろ呼吸機能が不良で消極的に縮小手術を選択せざるを得ない症例も多かったことが影響していると考えております。術後に在宅酸素療法を行うことを前提としてでも縮小手術しか選択できないような症例もありました。

2021年度も当科の特徴とする低侵襲の完全胸腔鏡手術から、心臓外科と協力して行う拡大手術まで広い守備範囲も特徴として症例を積み重ねてまいりたいと思っております。