腹腔鏡下膵頭十二指腸切除術

膵臓の中でも十二指腸に近い膵頭部にできた膵臓がんや中部~下部の胆管がん、十二指腸乳頭部がんなどに対する標準的な手術は膵頭十二指腸切除術です。

がん以外には、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)、膵のう胞性腫瘍(MCN)、膵神経内分泌腫瘍(PNET)、膵Solid Pseudopapillary Neoplasm(SPN)、転移性膵腫瘍などの疾患(病気)に対して膵頭十二指腸切除術が行われます。

がん以外の疾患では腫瘍が膵臓周囲の組織や臓器、血管を破壊して広がる(浸潤する)ことがほとんど無いので、がんの手術のように膵臓周囲の組織や臓器、血管を膵臓とともに切除する必要がありません。 そのため同じ膵頭十二指腸切除術でも、がんに対する手術と比較すると手術手技が単純で手術時間が短く済みます。

膵頭十二指腸切除術は開腹で行っても難度の高い手術ですので、腹腔鏡下に行うにはより高度な技術が必要で、時間もかかります。

私たちは2018年10月までに70例を超える腹腔鏡下膵頭十二指腸切除術を実施してきましたが、安全性と確実性を確保して腹腔鏡下に行うためには、がん以外の疾患を対象とした比較的単純な手術手技に限定して行うのが妥当と考えています。
実際に、現時点で保険診療として腹腔鏡下に行うことが許されているのは、がん以外の疾患に対する手術だけです。

膵頭十二指腸切除術で切除される範囲
膵頭十二指腸切除術で切除される範囲

膵頭十二指腸切除術では、膵頭部と十二指腸、胆嚢・胆管だけでなく胃の出口(幽門輪)側の1/3~1/2をまとめて切除します。

胃を残すことが可能な場合には幽門輪温存膵頭十二指腸切除術(胃をすべて残す術式)を積極的に採用しています。幽門輪温存手術の手術後に胃の動きが悪く、食事がとれない期間が長くなるという結果を報告している病院や施設がありますが、私たちのもとで手術を受けた患者さんの中では大きな問題にはなっていません。


胃をすべて残す手術を希望される方は当センターにご相談ください。

※ なお、腹腔鏡下膵頭十二指腸切除術を保険診療として行うためには、厚生労働省が定めた施設基準を満たす必要があります。当センターで腹腔鏡下膵頭十二指腸切除術を担当する本田医師は前任の施設(都立駒込病院)において保険診療として同手術を多数実施していましたが、当センターは2018年10月のスタート時点で施設基準の一つ(1年間の膵切除件数50件)を満たしていません。そのため、現時点で実施する場合、保険診療(患者さんの負担30%)ではなく保険外診療(患者さんの負担100%)となります。

上記で説明した内容は、大まかなものです。実際にはそれぞれの疾患や患者さんの病状によりさまざまな違いがあります。詳細な内容については担当医がご説明します。また、ここにお示しするもの以外にも、施行可能な術式があります。情報が必要な方は当センターまで直接お問い合わせ下さい。