重症大動脈弁狭窄症の患者様・ご家族様へ

新しいタイプのTAVI弁について ~より安全な治療を目指して~

インターベンションの世界的権威・コロンボ、グルーベ両医師が来院されました

開胸して人工心肺下に行う弁置換手術がハイリスクと考えられる重症大動脈弁狭窄症の患者様に対する経カテーテル大動脈弁植え込み術(Transcatheter Aortic Valve Implantation: TAVI)が国内でも広まりつつあります。当院は国内で11番目に施設認定を受け、2013年12月より施行開始致しました。
2015年秋からは、経大腿動脈アプローチ(足の付け根から)のTAVIの場合、それまでカットダウン法といって外科的に大腿動脈の挿入部を露出していたのを、パンクチャー法といって全く切開せずに止血デバイスを使用する方法に変更し、さらに患者様の体への負担を軽減するように治療戦略を改良しています。

TAVIについて

さて、2016年1月より、新しいタイプのTAVI弁(Medtronic社のCoreValve)が国内で使用可能となりました。これまではEdwards社のSAPIEN XTといういわゆる「バルン拡張型」の人工弁しかありませんでしたが、このタイプの弁が苦手とする症例(大動脈弁に偏在性高度石灰化がある、大動脈弁から左室流出路に高度石灰化が連続している、先天性2尖弁など)が存在しました。対して、CoreValveは「自己拡張型」であり、患者様の体外で弁を冷却して変形させ、デリバリーシース内に装填し、体内(体温)で展開させると自己拡張し、大動脈弁内に固定するものです。このCoreValveであれば、SAPIEN XTが苦手とする形態の大動脈弁であってもTAVIを比較的安全に施行することができるのです。

当院では私のイタリア留学中の恩師であるアントニオ・コロンボ先生と、その御親友でもありドイツのインターベンションの権威であるエーベルハルト・グルーベ先生という二人のスーパーエキスパートをお招きして、この新しい人工弁CoreValveを導入致しました。

(左から)コロンボ先生、長沼、グルーベ先生

今回、コロンボ先生に当院に来院頂き、可愛い(?)弟子にご指導頂きたいという、大変無理なお願いを聞いて頂きました。大変に高名で多忙に過ぎる先生方であり、本来は来日される予定は全くありませんでしたが、旧知の仲である中村淳院長、及び弟子である長沼の為に、一度きりの来日という約束で、同時にお二人も新東京病院に来て下さいました。TAVIが全例無事に成功した後で、世界最先端の心臓カテーテル治療についてレクチャーして頂き、当院スタッフと熱い議論を交わしました。TAVIを含めた低侵襲心臓治療の領域においては、残念ながら日本は欧米より何年も遅れをとっています。海外のエキスパートとの繋がりを大事にして良い刺激を受けながら、われわれ第一線の医師は常に新しい情報についてアップデートし続けなければならない、と再認識致しました。

TAVI中の様子

SAPIEN XTとCoreValveのいずれが良いかは患者様毎に検討する必要があります。各々長所、短所がありますので、弁の特性を熟知し、適切に選択する必要があるのです。引き続き新東京病院ハートチーム一丸となり、日々の努力を怠らず、患者様の為に精進してまいる所存です。

(左から)中尾副院長、中村院長、長沼、コロンボ先生、グルーベ先生、三友

(2016年1月)